そく、あこがれの恐竜君との会見に出かけた。地下鉄に乗りまちが型のものはこれがまた、エムシュウイラーのイラストにでもありそ えてハーレムのどまんなかにおっぽり出されるやらなにやら、とに うなすばらしいやつで、ジュラルミンだかステンレスだかの塊をと ーヨークの地下りあけ、鋭いナイフでサクリサクリと切り落して格好をつけ、窓の かくやっとのことでたどりついた。なにしろ、ニュ 部分をグイと深くのみでくりこんで : : : という感しである。行先表 鉄の不潔で無気味なことは言語に絶する。博物館のあるセントラル ーク西八一丁目駅などはむき出しのコンクリ ートに十ほどの裸示板がとてもカラフルでこれがまた一段と : アメリカ自然史博物館には、この八十一 まあそれはとにかく 電球 ( 三分の一は断線している ) が盗難防止の枠に包まれて、三〇 丁目駅のホームからそのままじかに入ることができる。螢光灯があ メートル毎ぐらいにぼつん。ほっんとついているだけという妻まじい もの。こんまりはやらない国だからホンワカとした感じの地下ホールの左側は つまり、眼の前に並んでいる無数の食いものの なところでキャフェテリア 兄ンちゃんなかからたべたいものをたべたいだけ選んで自分の皿に盛って貰っ 0 てその分だけ銭を払うというしかけーーーになっているのだが、日本 風のニグロ の一団なんの博物館付属の食堂が大抵の場合に薄暗くて、不潔で、みみっちく かと擦れ違て、安っぽくて、とてもコカコーラの一杯飲む気にもならないのと すったのではちがって、すばらしくスマートで居心地のよさそうな店だった。豪 者 まったく生勢といえば、メトロポリタン美術館の食堂、これはもう本格的なギ 5 リシャ様式の黒大理石のつくりに、正装したウェイターが歩きまわ きた心地は ム っていて、予約で一杯という札がぶら下っていたが、恐れ多くて我 しない。電 々なんそが入れるような雰囲気じゃない。 車そのもの の 2 ありていに言うと、アメリカ自然史博物館の展示物そのものは大 館にしても、 古いやつは部分、べつに唸るほどのものではない。世界各地の哺乳類や鳥類の 史 剥製、アメリカ・インディアンやアフリカ土人の歴史と分類などそ おそろしく れそれ膨大なものであり結構なものにはちがいないが、まあそれだ 古ぼけた今 メ けのこと。蛋白質の生成や z と遺伝情報の話は、テーマが最新 ア のものだけに、すばらしく手の込んだディスプレーとその中にオー ラになりそ ト・スライドやエンドレス映画をいくても組みこんだ贅沢なものだ うないやな が、むつかしくてなんにもわからない 臭気のする 地下から始めて一階、二階と順に上って、ついに四階にたどりつ やつが走っ ている。もき、階段のすぐ脇のホールに何気なく入ったとたんまさしくそこ ちろん最新に、あのプロントザウルスがいたのである。それは『ライカ・マニ 7 ・ⅱⅱいⅱⅱい
すこし写真にうるさい人だったら、ウイラード・・モルガンにない、ただただ恐竜のいるところだったのである。ケネディ空港か ・・レスターという二人の名を聞いたことがきっとおあらタクシーでクインズ区をぬけてイースト・リ・ ( 冫カカるクイン りと思う。有名な『ライカ・マ = = アル』という本の編集者であズボロー・プリッジを中頃までくると、突然、マン ( ッタン区の全 る。初版は一九三〇年代で、今日までに十数版が重ねられており、 貌ーーーーっまり国連ビルからパンアメリカン・ビルから、ありとあら ライツが型のライカを出したときなど、我々は現物より先にそゆる摩天楼が眼前に展開してくる。これは壮烈な観物たった。地球 の『ライカ・マ = アル』でお目に掛ったほどである。小学校の文明が目下のところ、ここまで来ているのだという、なにか得体の 頃、おそらく一九三〇年末期の版だろうとおもわれるこの本が家に知れぬ不気味さがひしひしとせまってくる感じなのである。ところ あって、写真が多いので子供なりに大いに親しんだのだが、今にし が、そのど真ン中にである。その雲つくばかりの , ーー・・・事実、雨の日 て思うと、おそらく執筆者がニューヨークのアメリカ自然史博物館などエンパイヤ・ステ ートビルの上の方は雲の中に入ってしまう の館員で、タイトルが「博物館業務におけるライカの活用」とかな 雲つくばかりの摩天楼の塊を思わせるものすごくマッシヴなニ んとかだったのだろう、豪華なアート ーの何頁かに、同博物ュ ーヨークの中心部ミッドタウンのど真ン中に、かって一億年も昔 館での恐屯の骸骨の復元作業の実況やディスプレーなどの写真が載にこの地を闊歩したおびただしい数の恐竜の骸骨がひっそりと並ん っていて、考えてみるとこれが恐屯とのわが最初の出会いなのだつでいるというのはまた、なんと象徴的なことであろうか。タクシー の中でその恐竜のことを思い出したとたん俺はとうとうニューヨ 三つ子の魂なんとやら僕にとってニュー ヨークといえばエン。ハイ クにやってきたのだなという実感がわいてきたのたった。 ヤ・ステートビルでもなければプロードウェイのミュージカルでも 次の日、とりあえす仕事が一段落すると、なにはともあれ、さっ Ⅲ石 W 日 . し & し耻ロ SFRVLSS 連載コラム実験室⑩ 解剖学のすすめ ( その 8 ) 怪物考— 野田宏一郎 6
MAY, 1969 , VOL. 10 , NO. 5 S F マガジン 5 月号 ( 第 10 巻第 5 号 ) \ 220 昭和 44 年 5 月 1 日印刷発行発行所東京都 千代田区神田多町 2 の 2 郵 1 0 1 早川書房 TEL 東京 ( 2 ) 1551 ~ 8 発行者早川清 編集者福島正実印刷所日東紙工株式会社 ギャラクシイ・サイエンス・フィクション誌特約 表紙岩淵慶造 目次・扉中島靖侃 イラスト 真鍋博金森達 岩淵慶造中島靖侃 実験室【巴言、下第訂学のす手」その 8 怪物考 - 第四寧公式 E 日 2 と相対性論 【円】カリブ海を行く レム、 LL 映画を語る 架空匿名座談会「 U)LL 界に新風よ吹け′こ スキャナー (-DLL でてくたあ トータル・スコープ 南米コロンビアに落ちた謎の金属塊 世界でいちばん財宝の沈んでいる場所 名刑事ラドルーのおかした犯罪 人気力ウンター さいえんす・とびつくオ・ LL 映画ストーリ イ・コンテスト入選発表 物理学入門 世界みすて りとびつく 地球の汚名 豊田有陌」 貴重なエハメゾ / 料を月面上でサミ ! ン輸送船から奪回ー ) た逃亡航宙士達は、そこ て・ ) べを第さ一クフンストンの意外な正本を知った / 新の式っ本格宇宙舌處′ てれぽーレ」 東南アジア非感傷旅行 : 野田宏一郎 石原藤夫 日下実男 ) 袋一平 矢野徹 伊藤典夫 石川喬司 大伴日「司 : 福島正実 1 1 6 1 1 1 105